生ワインって一体なんなの?

👆 生ワインってこういうこと?
おはこんばんは、レオです。
飲食店辞める少し前から気になっていたのが生ワイン。
最近しょっちゅう耳にするようになりました。
私はソムリエでした。
ワインの知識はハッキリ言ってあります。
だけど、この生ワインという言葉は全くもって知らなければどんな存在すらかも分からない。
頭でっかちの私が想像していた生ワインは冒頭の画像のようなもの。
熟成樽から直飲みするのを生ワインって言うんだろうか…。
真剣にそう思っていました。
ググりました。
生ワインの定義
ろ過しない
火入れ殺菌しない
酸化防止剤、添加物が入っていない
以上が生ワインという物の定義らしい。

何なのそれ…
そういう定義をされてもまだよく理解ができません。
だってその3つの定義なんてワインづくりにおいて当たり前のことだからです。
火入れする時点でもうすでにワインとは呼べるかどうか…。
ごく一部、ワインに加熱殺菌をするフランスの生産者はいるにはいる。
パスツリゼーション、フラッシュヒーティングなどの加熱殺菌方法は確かにある。
牛乳なんかも瞬間加熱で殺菌しますね。
だが、まずまともなワインにこういった手法は用いられない。
自分が丹精込めて育てたブドウで醸造したワインに、加熱処理をするなどそんなクレイジーなこと99%の生産者はしない。
加熱した時点でワインの大事な香りや味わいが台無しになるからだ。
ワインの醸造というのは
1.桶にブドウ入れて潰す
2.発酵が終わるまで放置
3.発酵終了したら液体と固形物を分離し樽に入れて熟成
4.熟成している間にオリがたまるので何度か上澄みのワインだけを取るオリ引きをする
5.いい具合に樽熟成したら瓶詰めする
以上がざっくりとしたワイン生産の工程である。
この間火入れをする工程は無い。
ワインは火入れの必要がそもそもない。
なぜならばワインは高アルコールに加え樽熟成することで加熱殺菌せずとも微生物学的に安定するからだ。
だが先ほども述べたように火入れをする生産者はいる。ただ評論家などから非難の的になっている。その高級ワインを私も飲んだことがあるが、その地域の他の生産者と比べてもかなり見劣りすると思う。
ワイン生産国でこんなことをする場所はほぼ無い。
ワインを加熱殺菌するという暴挙を繰り返してきた国は日本以外にない。
なぜ日本はそんなことするのか。
原因はおそらく日本酒造り
日本酒造りにおいて最大の敵は 火落ち菌と呼ばれる乳酸菌の一種 です。
この火落ち菌はアルコール耐性があるため日本酒のような高アルコールでも繁殖できる。
火落ち菌は少量でも日本酒を白濁させ、酢のような刺激臭を発生させてしまう。
火落ちを出した酒蔵は下手したら廃業に追い込まれるほどの大ダメージなんだそうだ。
なのでほとんどの日本酒は65℃で加熱殺菌をする。直接加熱ではなく、容器に入れ湯煎方式で処理される。
日本酒造りには加熱処理は必然であるため、ワインにも当然のように行ったことが考えられる。
今では全国各地に、きちんとワイン醸造を習得された生産者がいらっしゃいます。
この日本という湿度の高いモンスーン気候で必死にブドウ栽培をされ、以前とは比べ物にならないクオリティの高いワインを生産されている。
ただ今でもスーパーマーケットに500円くらいの安価な国産ワインなるものが大量に陳列されている。
このほとんどが加熱処理が施されていると考えて間違いない。
だからそれらのうたい文句は、
防腐剤ゼロ!
無添加!
である。

アホちゃうか
防腐剤って何なの?
もしかしてそれ酸化防止剤の事言ってるの?それって亜硫酸の事言ってるの?
ワインには亜硫酸ってのが添加されていると聞いたことがあるかもしれません。
これについては間違いないです。量の差はあれ、添加されています。
ただ、亜硫酸は酸化を緩やかにする効果は確かにあるが、食品に添加される防腐剤とは違う。
そもそもワインは酸化はするが、腐敗はしない。
酸化と腐敗の違いも立派な大企業が理解していないのだろうか…。
亜硫酸は瓶熟成に伴い、化学変化を起こして消費・減少するものでもあり、酸化熟成の速度をゆっくりとさせるもののひとつである。
亜硫酸以外のワインの酸化を緩やかにするものはアルコール、タンニン、糖度、ワインのpH、二酸化炭素の有無である。
そして亜硫酸の添加は世界的に減少している上、ワインの醸造過程で必ず自然発生する成分でもある。だからこの世に亜硫酸ゼロのワインは存在しない。
そして亜硫酸をよく知りもせず悪の権化のように毛嫌いするが、極上の甘露であるデザートワインなんかは亜硫酸を添加しなければ、あのハチミツのような黄金色が直ぐに褐変し大惨事になる。
生産者も最小限の亜硫酸は添加しなければならないことを知っているし、ぜんそくの方を除きワインに添加されている量の亜硫酸は人体に害は無いと言われている。
ワインだけでなく、様々な食品たとえばドライフルーツなんかにも亜硫酸は酸化防止のために広く使用されている。
食品に添加されているソルビン酸Kなどの方が発ガン性も確認されているため、よほど体に悪いと思うのだが。
確かに加熱処理をすればほとんどの菌は死滅する。確かに微生物的には超安定する。
防腐剤ゼロ!というものすごいパンチの効いたワードをかかげ見当違いな安全性をアピールしているが、それ以外にアピールするところがないための苦肉の策なのだろう。
ちなみに私は亜硫酸入りのワインをどれだけ飲んでも頭痛はしないが、ある特定の自然派ワインとこの無添加の国産ワインを飲むと頭が痛くなります。なぜなのか理由を誰か教えてほしい。
ワインにとって乳酸菌は必要な菌である
ワインの酸として大きな割合を占めるのは酒石酸、次いでリンゴ酸である。
このリンゴ酸というのが鋭い酸味なため、ワインにまろやかさを付与するために多くのワインでリンゴ酸を乳酸に変えるマロラクティックコンバージョンというテクニックを導入している。
この化学変化をもたらすのが乳酸菌である。
今は乳酸菌を人為的に投入するが、乳酸菌なんて普通に存在する菌です。科学が進んでいなかった時代は自然に乳酸菌が活動し自然とマロラクティックコンバージョンを終わるのを待つだけでした。
このマロラクティックコンバージョンによって生産されるのがジアセチルという成分。
適量であればバターのような風味をワインに付与します。
目指すワインの風味によっては、マロラクティックコンバージョンを行わないものもあります。
乳酸菌がワインにとっては役に立つ菌であることは理解していただけたでしょうか。
まだワインについての研究も進んでいなかった時代は火入れをやっていたとしても仕方ない。
けど科学が進んだ現代、しかも菌の研究においては日本は頭一つ抜けた超先進国である。
その日本の大企業がなぜまだそんな愚行をしているのか不思議で仕方がない。
ワインと日本酒はそもそも醸造方法が違うということくらい分かっているはずなのに。
「国産ワイン」の真実
この防腐剤ゼロの安心安全国産ワイン。
これでもかってくらい国産を強調している99%のワインの原料は外国産である。
そしてそれはブドウですらない。
裏ラベルの原材料を確認するといい。
原材料:輸入ブドウ果汁と表記されているだろう。
ブルガリアなどの外国から大量のブドウ果汁、もしくは濃縮還元ブドウ果汁を購入し、それを工場で醸造しているのである。
果汁にしないとブドウは腐敗するからだ。
そしてこのブドウ果汁も酸化・腐敗を防ぐために何も添加されていないわけがない。
だから輸入ブドウ果汁を原料とする防腐剤無添加の国産ワインは、工場で醸造する際に防腐剤を添加していません。というだけの話だ。
100歩譲って、ブドウ果汁のみを使っているならばまだいい。
風味をよくするために他の果物の果汁(ブルーベリーなど)、緑茶カテキンなどを加えて醸造している物もある。
85%以上ブドウ果汁を使用していれば、他の材料を表記しなくて良い法律なのだろう。
もはやワインですらない。
いい加減、外国から買ったブドウ果汁で作ったワインを国産ワインと堂々と名乗るのはやめた方がいい。
ワイン生産国においてワインとは、自国で栽培したブドウのみを使って自国で醸造し自国で瓶詰したものをワインと呼ぶのです。
そして大流行りの生ワインだって需要に応えるためには、国産のワイン用ブドウだけでは絶対に賄えない。
火入れもろ過も添加物もなし!でも果汁は外国産だけどね(てへ☆) だけど余計なことしてないから生ワイン美味しいでしょう?
そういうことだ。
日本産・国産というワードは、日本人のプライドであり、イコール品質の高さ、安全と信頼の象徴である。
ただ国産ワインに限ってはこの概念は当てはまらないようだ。
いい加減表記を厳しく改めないと、懸命に自国産のブドウでワインを造っている方たちに失礼だ。
何より消費者に大きな誤解を与える。
ろ過について
どんな高級ワインでも自然派と呼ばれるワインでも、若干のオリ引きはする。
上澄みとオリを分離することをオリ引きといい、これを全くしないとワインの口当たりや味わいはかなりザラザラします。
ワインのオリっていうのは、酵母などの菌の死骸やら酒石やらの固形物で別に飲んでも人体に害はない。だけどオリはたいてい苦い。
私はそんなザラザラした苦いワイン飲みたくない。
ワインは滑らかな感触も魅力の一つだからだ。
だから生産者はオリ引きをするのだ。
恐らく生ワインで定義されている “ろ過" というのは殺菌・滅菌フィルターの事を言うのだろうけど、まともな生産者はそもそもフィルターはかけない。
フィルターを通すことで大事な香り成分まで除去されるからだ。
3リッターとか5リッターの箱ワイン。
あれはフィルターにかけることはもちろん、ソルビン酸までが添加されている。
でも濃くて香りもいいし樽香もするし、おいしいよ?
間違いなく、香料が添加されています。
樽熟成と同じ効果のある簡易的な醸造方法で樽香がつけられています。
ワイン樽を作る時に生じる端材を細かく砕きローストし、でっかいティーバッグに詰めてそれをワインに漬けます。
これで樽の香りが付きます。
ワインの濃さを出すために、水分だけを取り除くこともできます。
箱ワインなどの工場生産のワインはありとあらゆる処理が施されています。
そういった工業生産のワインや火入れするようなワインと一線を画すために、生ワインという言葉を作ったのだろう。
その気持ちは分かる。
ただ、消費者の誤解を招く知性のかけらもない浅はかな命名はやめた方がいいのではないだろうか。
センスもないし。
きちんとしたワインの醸造方法や歴史など調べ、よく吟味してから命名するべきだ。
オーストリーにホイリゲというワインがある。
発酵が終わったばかりの酵母や乳酸菌の活動が若干続いているワインだ。
だから若干濁りがあり、微発泡してフレッシュな味わいである。
これはその年の収穫を祝い、感謝し、楽しむためのワインだ。
いわゆるヌーヴォー(新酒)である。
本来は、地元の人が収穫に感謝する飲みものなのだ。
これをイメージして生ワインを造っているならば、理解ができる。
日本酒にも季節限定のひやおろしとかあるし。
でも生ワインは年がら年中生産・販売されているようだ。
そんなんだからワインは誤解されるのだ。
ハッキリ言って恥ずかしい。
日本人のワインリテラシーは企業が改めない限りまだまだ当分、低いままだ。
まとめ
生ワインの定義が無濾過、火入れしない、防腐剤無添加だとするならば、海外から輸入されるワインのほとんどは生ワインということになる。(箱ワインを除く)
ワインは味噌やヨーグルトと同じ発酵食品である。
質の高い本物の純国産ワインは、1本2000円以下ではほぼ飲めない。
安いワインを非難しているわけではない。
安全でおいしくて安いに越したことはない。
箱ワインだってワインの品質はさておき、容器を軽くしたことで立派にCO2削減には貢献している。
消費者に誤解させて購入誘導するような名前であったり、事実を分かりづらくさせるような表記が問題なのです。
イコール消費者から選択の自由を奪っていることになる。
それが一番の問題だ。
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